大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

秋田地方裁判所 昭和42年(むのイ)51号 決定

被疑者 保坂勇

決  定 〈被疑者氏名略〉

右被疑者の弁護人金野和子から、準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

検察官秋山富雄が、昭和四二年二月一八日行つた申立人に対する被疑者との接見指定拒否処分を取消す。

弁護人は、昭和四二年二月二〇日午後四時三〇分から三〇分間、被疑者が右時間に現在する場所で、被疑者と接見することができる。

理由

本件申立の理由の要旨は、申立人は現在勾留中の被疑者と接見するため、昭和四二年二月一八日秋田地方検察庁秋山富雄検事に対し、接見の指定の申立を行つたところ、同検事は、既に三回接見の機会を与えたのであるから、勾留期間満了の同年二月二二日まで接見の指定はできない旨拒絶したが、右は刑事訴訟法三九条三項の趣旨を無視する違法なものであるから、申立人が被疑者と昭和四二年二月二〇日午前九時から、午後五時までの間少くとも三〇分間接見ができるように、右処分の取消変更を求めるというにある。

よつて、按ずるに、一件捜査記録並びに金野和子作成の上申書によると、右申立の理由のうち、事実の摘示をした部分を認めることができるほか、被疑者は、公職選挙法違反の被疑事実(金銭供与罪)により昭和四二年二月三日勾留され同時に接見等の禁止処分を受け、同月一二日一〇日間の勾留延長処分に付せられその満期日は、同月二二日であるが、その間同月七日、一〇日、一五日の三回に亘り各三〇分申立人と接見していることが認められる。ところで、本件事案の内容に鑑みると、二〇日間の勾留期間中に、三回、各三〇分宛の接見がなされていれば、被疑者が防禦の準備をする権利を十分に行使していると断ずることはできない。反面、本件においては、一件捜査記録を精査しても、二月二〇日に三〇分の接見を指定した場合捜査に支障あることを窺わせる事情は発見することができない。よつて、検察官の本件拒否処分は、その裁量的権限を超えた不当な処分であるといわざるをえず、本件申立は理由があるので、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項に従い、主文のとおり決定する。

(裁判官 佐藤文哉)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例